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史上最強の哲学入門 飲茶(その3)

◆はじめに
 この記事は、以下の記事の続きで、神様の真理について記述します。
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◆神様の真理
 ■古代:キリスト教思想の普及
   キリスト教は甘い言葉をささやく。
   「信じる者は救われる」
   弱者に寄り添った教義であるキリスト教は人気を博した。
   ローマ帝国は392年にキリスト教を国教とし、キリスト教は世界の主たる宗教として広まった。
 
  このようにして広まると必ず発生する事象がある。それが内部分裂である。キリスト教の教義でも、戒律を厳格に守るか、自らの弱さを認めるかなどの解釈が発生した。そこで一役買ったのがアウグスティヌスであった。
 
 アウグスティヌスは弁論術を学んでおり、さまざまな論敵を論破していく。さらに、「告白」を記述し、「人間は神により救われる」懺悔的教義を打ち出す。こうして、キリスト教は安定した時代に入っていくのである。
 
 ■近代 キリスト教の破綻
 12世紀になると、アリストテレスの哲学がラテン語訳されて、西洋に入ってきた。論理的な哲学はキリスト教の神学と矛盾している点がある。ただの人が、キリスト教の教義と矛盾しているだけなら異端とすればよかったが、「万学の祖」として高名なアリストテレスをさすがに無視できない。ここで哲学と神学の論争が始まる。
    
 哲学と神学の矛盾点であるが、例えば、万能のパラドックスがあげられる。これは万能の神ならば、持ち上げることのできない石を作れるはずだという話である。持ち上げられなければ、神自身が石を持ち上げられないという意味で万能ではないし、持ち上げられれば、持ち上げられない石を作れないという意味で万能ではない。
    
 また、宗教的な真理と哲学的な真理は別のものだという、2重真理説まで持ち出すしまいである。それは真理と呼んでよいのだろうか。。。
 
 哲学と神学の論争をまとめたのはトマス・アクィナスである。
 トマス・アクィナスは理性の範囲外にある事象を示した。例えば、因果律を考えれば、一番初めの事象はどういう原因で発生したのかということは理性では追求できない。このような理性の範囲外にある真理については神からの啓示でしか知ることができないとして、哲学的領域と神学の領域を区別した。
 
 ■ニーチェの思想
  さらに時は流れ、キリスト教は力を失っていた。
  19Cにはついに「神は死んだ」という禁句を言ったものがいる。ニーチェである。
 
  ニーチェはただ単に神は死んだといったわけではない。神を信じていない人は当時たくさんいたはずである。ニーチェの偉大な点は、神のいない世界でどのように生きればいいのかを示している。それは「力への意思」である。
  力への意思とは、ニヒリズムに包まれた世界でも、生きることを肯定するという思想を指す。ニーチェが没してから100年以上たった現在、ニヒリズムに包まれた世界にいる。我々はどのようにして生きていけばよいのだろうか。
 
◆まとめ
 日本人は神様のことを信じていないから、あまり関心のない分野かもしれない。しかし、西洋の思想は間違いなく聖書の影響を受けている。ニーチェツァラトゥストラは聖書のパロディといっているほどである。世界を知るためにも、神様に対する考えとかを知っておく(理解するのは不可能と思う)のは有意義であろう。