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老年について キケロ

◆概要

 ストア派の哲学者キケロが書いた作品

 

◆テーマ

 一般的に老年は嫌われているが、なぜだろうか。

 むしろさまざまな経験を得た収穫期ではないか。

 老年について、古代ローマ人が意見を述べる。

 

◆要約

 老年が嫌われるのは以下の4点からなるが、それは誤解であるという。

 1:社会から離れてしまう

   本当にそうであろうか。例えとして船を考える。乗員は甲板上をうろうろする必要があるが、操舵者は動かない。

   確かに、目立たないが仕事をしているし、そのうえ仕事の重要度も上がっている。

  

 2:体力がなくなる

   若者は熊のように力がないと嘆くだろうか。

   同じように老人は体力がないと嘆く必要はない。老人は必要な体力だけ残る。

   静かで気負いのない話し方は、老年に特有のもの。

   もし、必要な体力さえ残らないというのならその人の習慣がよくないわけであり、老年が悪いわけではない。

 

 3:快楽がなくなる

   若者は暴飲暴食や性を貪る。そもそもこのような快楽は必要なものではない。

   快楽は理性を狂わせる。そのような快楽がなくなることは憂うべきではなく、むしろ喜ぶべきことである。

   若者は食事の量や味などを楽しむが、老人はともに食べる人、会話の円熟さを楽しむものである。

 

 4:死が近づく

   死はつらいものではない。もし死が辛いというのならば、その人の生き方に問題がある。

 

◆感想

  ・個人的には、おおむね賛成。中・高校生より大学生、大学生より社会人の方が楽しい。理由は世界に対して予想して、あたることが増えたから。何も分からない世界で理不尽に振り回されていたけど、年を取って道理をわきまえてきたと思う。

 ・キケロなどのストア派の考え方は実践的。体力、快楽、死にどのように考えるかで世界が変わることを示している。この考え方は現代でも通じると感じている。

  ・死について、魂は消滅するのだろうか。子供が知識を急速に得ていく過程は、前世の記憶を取り戻しているのではないだろうか。これは現代では受け入れがたい考え方と思うが、死を必要以上に恐れる必要はないという点には同意。死を恐れて生を楽しめないなら本末転倒でしょ。

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