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福沢諭吉

◆まえがき

 日本の近代化に貢献した福沢諭吉

 彼の肖像画は現在1万円札に使用されている。

 彼がどのような人物だったのか、整理する。

 

◆概要

 福沢諭吉は明治時代の蘭学者であり、教育者であり、作家である。

 様々な邦訳をつくり、慶應義塾大学を創設し、学問のすすめを著した。

 彼は思想は当時の人々に多大な影響を与え、彼の功績は我々の常識の根幹にかかわっている。

 

◆エピソード

 ・邦訳の作成

  福沢諭吉は西洋の文化を日本語に翻訳している。具体的には「演説」、「自由」「西洋」など。非常に幅広く活躍している。

  個人的な感想を言わせてもらえば、不自然な訳が多いと思う。「nature」が「自然」なのはおかしい。性質という意味が本質をついている。この問題のポイントは福沢諭吉がいい加減だったということではなく、先人の知識をアップデートできない日本人の性質によるところである。(今でも不要と思われる事務手続きが、本質かどうかではなく、慣例だからという理由で続けていることは多くある。)

 

 ・慶應義塾大学の創設

  一流大学として名高い慶應義塾大学の創設者が福沢諭吉である。

  慶應義塾大学の創設の目的は次のようにされている。

 

慶應義塾は単に一所の学塾として自ら甘んずるを得ず。 其目的は我日本国中に於ける気品の泉源、智徳の模範たらんことを期し、之を実際にしては居家、処世、立国の 本旨を明にして、之を口に言ふのみにあらず、窮行実践以て全社会の先導者たらんことを欲するものなり。」

 

 要するに、慶應義塾に学んだ者は社会のリーダーにならなくてはならない。リーダーとして高い気位を持たなくてはいけないということ。

 リーダーになるための学校だったわけである。

 サラリーマン社長にも、気位を持ってほしいものだ。

 

 ・学問のすすめ

  学問のすすめは当時の民間人に向けて、学問すべしということを平易な文章で書いた本。

  当時の文章は、技巧を凝らし、難解な文章を書くことが知識人の教養と思われていたが、その考えに真向に反対する著作であった(とはいえ、現代人にとってはこれでも難しいと感じると思うが)。

  当時の人口は3000万人、学問のすすめは300万部売られたとされ、日本の人口の10人に1人読んでいたという計算になる。現代のベストセラーに明確な定義はない(だからベストセラーと言ったもの勝ちのモラルハザード感はある)が、おおよそ10万部からベストセラーといわれている。如何に学問のすすめが売れていたかがわかるだろう。

 

 書き出しは「天は人の上に人をつくらず、人の下にひとをつくらず」であり、有名なフレーズである。この後には、けれども、貧富の差や知識の差が生じているのは、ひとえに学問の差であるという展開をする。この本は、学問の重要性をとき、どんな学問をすればよいか説明し、民衆に学問をすすめるという趣旨の本である。

 

 内容にもう少し触れる。何章にもわたって記述されているが、個人的に重要と感じたポイント2点だけ抽出する。

 ・個人の独立の上に国家が成立する

 ・学問は実践してこそ、役に立つ

 皆様も心に手をあてて考えてほしい。自分は独立できているだろうか。学問を実践できているだろうか。

 

◆まとめ

 ところどころ口を挟んでしまったが、福沢諭吉は日本人の環境に大きな影響を与えている。

 日本の近代化の歴史を学ぶためには避けられない人物なので、きちんと抑えておこう。