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考える余地しかない

◆はじめに

 大層なタイトルを付けたが、理系の学生なら数式としては見たことのある、当たり前の話である。ただし、今回は理科系で得た考えを実生活に活用してみようという話である。

 

◆この話をするきっかけ

 我々の周囲には、知っているようでその意味が共有されていない言葉が多くある。

 その結果、コミュニケーションが取れず、話がかみ合わないことがある。

 周囲の人で「なんでそんなことを聞くの」という人がいれば、その人はものすごく考えたうえで聞いている可能性がある。

 考えている人は大変なんだということを紹介したい。

 

◆事例

 ・私の彼女・彼氏はいい人なんだ。

  いい人というのは何でしょうか。要素を取り出すと以下の項目がありそう

   1.優しい

   2.面白い

   3.かっこいい、かわいい

   4.経済力がある

   5.学歴がある

   6.知性がある

   7.勇気がある

   8.清らかである

   9.決断力がある

   10.その他

 などなど。もちろんこれらの項目をすべて満たしているというのが理想であるが、そうではないことが実際であろう。じゃあ我々は取捨選択をしているわけであるが、どのように取捨選択をしているのだろうか。

 

 ・この製品はいい製品だ。

  人を評価するのは倫理的に問題点があると思うので製品、ここではエアコンを考える。いいエアコンとは何であろうか。

  1.機能(冷房・暖房)

  2.コスト(安い)

  3.納期(当日取り付け)

  4.サービス(故障対応)

  5.使いやすさ(温度を自動調整)

  6.拡張性(携帯から操作できるようにプログラム可能)

  などなど。もちろんこれらの項目をすべて満たしているというのが理想であるが、そうではないことが実際であろう。じゃあ我々は取捨選択をしているわけであるが、どのように取捨選択をしているのだろうか。 

 

◆我々の判断

  我々の判断は各項目に重みづけをしている。

  例えば、私がエアコンを選ぶ時の基準を示す。

  ・機能→同じ温度でも、会社によって涼しさが違ったりする。大切。

  ・コスト→超大切。

  ・納期→故障に気づいたときは使用期間。なのでできるだけ早い方がいい。

  ・サービス→興味なし。

  ・使いやすさ→興味なし。

  ・拡張性→あったらうれしい。

  ・その他→メーカーの押しているポイントで気になるものがあれば加点

 

◆数学化する

  先項は文章で書いているが数字に直してみよう。

  100点満点と考えた時、各機能をどれくらいの重要度と考えているだろうか。

  ・機能→30点

  ・コスト→50点

  ・納期→10点

  ・サービス→0点

  ・使いやすさ→0点

  ・拡張性→5点

  ・その他→5点

 

  そのうえで各メーカの製品比較をする。各項目に対し、何点か書く。

          H社   T社   M社

  機能      100点  50点    70点

  コスト     50点    90点    70点

  納期      80点    80点    80点

  サービス    70点    70点    80点

  使いやすさ   80点    80点    80点

  拡張性     40点    50点    60点

  その他     0点   0点    30点

 

  各会社の合計点は以下のとおりである

     機能+コスト+納期+サービス+使いやすさ+拡張性+その他

  H社 (30*1)+(50*0.5)+(10*0.8)+(0*0.7)+(0*0.8)+(5*0.4)+(5*0) = 65点

  T社 (30*0.5)+(50*0.9)+(10*0.8)+(0*0.7)+(0*0.8)+(5*0.5)+(5*0) = 70.5点

  M社 (30*0.7)+(50*0.7)+(10*0.8)+(0*0.8)+(0*0.8)+(5*0.6)+(5*0.3) = 68.5点

 

以上の判断からT社がよいと判断できる。

 

なお、本件は以下の数式であらわすことができる。

 POINT = Σ G_i × ITEM_i

POINTは合計点、Gは重みづけ係数、ITEMは各項目である。

ただの期待値を求める数式である。

 

◆数学化の問題点

  問題点は以下のとおり

  ・いいと思う項目すべてを考えているわけではない

  ・我々は何が大切かということをあまり明確に考えていない

  ・個人の中で思っていることを他人と共有できていない。

 これらのことから、同じ言葉を使っていてもコミュニケーションができていないという現象が発生する。この現象を解決するには、ウザったいくらい質問するしかないのである。

 

◆最後に

 考える余地しかないというタイトルを付けたが、ここでは心構えを書いた。

 こんなことを知らなくても行動できるし、日常生活を送れるのは否定しない。

 ただ、世の中、あらゆる物事が思考の対象になるし、思考するためにはデータを集めるしかなく、データは必ずしも与えられたものではないということを示したかった。

 

 みなさまもあらゆることにたいして、疑問を抱いてみましょう。