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考える余地しかない 味覚について

◆はじめに

 以前、以下の記事で、世の中考えることがたくさんあるんだよということを書いた。

 今回は、その応用編の一つである。

 

bebebebe.hatenablog.com

 

◆きっかけ

 何を食べてもおいしいという感想を言う人がいる。

 一方どのようにおいしかったのか、なぜそう感じたのかということについて語ることは少ない気がする。

 また、お酒を勧めるときに「飲みやすい」という誉め言葉をつかう。

 飲みやすいが誉め言葉ならば水でも飲んでおけと思う次第である。

 本記事は、なぜこのようなことが発生するのか、ちょっと考えた雑記である。

 

◆虹は何色から構成されているでしょうか?

 いきなり、別の問題をもちだした。

 理科系でスペクトルを習った人間ならば、この問題は愚問と感じるであろう。

 なぜならば、虹は可視光領域で連続的な波長を含んでいるアナログ値であり、何色と分けられるものではないからである。あえて答えるとするならば、定義次第ということになる。

 しかし、我々の日常生活はそうではない。日本人であるならば虹は7色と考えるであろう。(実際高校の物理でも、波長の長い側から「赤橙黄緑青藍紫」と習う)

 話によると、アメリカ人は6色、ドイツ人は5色、ロシア人は4色…など様々らしい。

 おかしいと思うかもしれないが、そもそも連続量を無理やりデジタル化しているのだから、おかしいもなにもないのだが。

 

 話はそれたが、ここで言いたかったことは同じものを見ても、言葉により思考の制約を受けるということである。

 以前の記事で、我々の評価は以下の式であらわせると書いた。

 POINT = Σ G_i × ITEM_i

 言葉が少ないということはiの数が少ないということと同じである。

 

◆味覚について(料理篇)

 さて、話を脱線させたが、何を食べてもおいしいという答えしか言わない人は何が原因なのだろうか。

 ・味を感じられていない

 ・味を構成する要素を知らない。

 前者については論外(というか私には扱えない)だが、後者の場合、後天的な努力で改善できるのではないだろうか。例えば酸っぱいという表現を知らないものがレモンを食べたら、どのようにレモンの味を表現できるだろうか?

 ということで、味を構成する要素を考える。味覚とは甘味、酸味、塩味、苦味、うま味から構成される。さらに、知覚を拡張させれば、嗅覚とか視覚とか記憶もおいしさを構成する要素になる。

 さらに、甘味にも種類があるのではないだろうか?具体的な感覚を挙げることはできないので、レトリックの問題となるが、ほんのり甘い、とても甘い、柔らかい甘さ、甘辛いetc。例えば、おいしい野菜を食べるとき、「新鮮でかんだ瞬間のみずみずしさ、しゃきしゃきとした触感が素晴らしい。また、よく味わってみると、野菜の持っている、ほんのりとした甘さが出てきて、とてもおいしい」などといえば、どう美味しいのか伝わるであろう。

 

◆味覚について(お酒篇)

 お酒の味についてはお粗末である。

 これは、お酒を味わうものではなく、酔っぱらうためのツールとして使っている人が多いからであろう。 また、お酒について教育がなされていない(当然だが)ため、お酒を好きで飲んでいる人と、コミュニケーションツールで飲み人でリテラシーに大差がある。

 私はウイスキー党なので、ウイスキーの話しかできないが(ワインは複雑すぎる)、ウイスキーは他のお酒と比較して分かりやすいと思う。

 ポイントはおおよそ以下のとおりだと思う

 ・ピートの効いたスモーキーな香り(悪く言えば磯臭い)

 ・チョコのような香り

 ・柑橘系の香り

 ・バニラのような香り

 ・木材(樽)の香り

 ・ナッツの香り

 このような味(香り)が大雑把にあるのだが、ウイスキーを飲まない人に話をしても理解されないことが往々にある。

 

 お酒というものは、だれもが関わる世界というわけではないので、味覚も表現も未発達なのだと考えられる。

 

 つまり、味覚というものは先天的に身についているものというより、表現を学び、実際に食べてリンクさせるという動作を通じて身につける後天的な技術なのである。

 

◆数式化する

 さて、定性的な話が続いたので、無理やり数式化する。

 おいしさとはざっくりいえば、以下の式であらわせるのであろう。

  Deliciousness = Σ G_i × taste_i

 でこのtasteをどれだけ知っているか(iをどれだけ増やせるか)により味覚への理解が深まるのである。

 また、本文中では書かなかったで酸味と甘みのコラボのような相互作用もあるので、実際は以下の式であらわされるのであろう。

  Deliciousness = ΣΣ G_i,j × taste_i,j

 i=jのときは単一の味覚を、i≠jのときは相互作用を表す。

 味覚の要素が5種類あれば5×5の25通りの表現を知る必要がある。

 

◆まとめ

 本文章では、味覚について考えてみた。

 要するに、味オンチといわれる人間は味がわかっていないということもあるが、味を表現する言葉を知らないという可能性もあるのではないかという提言である。

 もし、表現を知らないだけならば、食べ物と表現の関係を学んでみればよいだろう。

 それだけで、おいしいという表現に対する理解が深まるかもしれない。